2.ご褒美

1/27
前へ
/330ページ
次へ

2.ご褒美

朝食で・・・ 9月も終わりに近づき、あと少しで引っ越しも完了といったところ・・ もう殆ど先生のマンションに荷物を運びこんでいて、市営住宅の掃除をすればいい位まで進んでいた。 僕が起きて部屋を出て、食堂に向かう。 「おはよう」 「おはよう。ヒロシ君!」 キッチンで振り向いている先生。そのまま料理を続ける。 「おはようヒロシ・・」 机で新聞を広げて読んでいる父の姿。 先生のマンションでの生活も大分慣れてきている。 「ふふ・・」 「どうした?」 父が不思議そうに僕に尋ねる。 「いや・・・何だか・・普通の生活に、なったのかなって・・・」 「ふーん・・・じゃあ俺も普通の事でも言おうか・・?」 「???」 何だろう? 「勉強は進んでいるのか?」 「あ・・」 父親が、子供を見た時の第一声は、「勉強」の事だろうか? 「どうなんだい?静江さん?」 「え?」 僕に聞いてるんじゃないんだ・・・ 「う~ん・・1学期の期末試験は~」 先生が答える。 「大分、上がったみたいね~!」 笑みになってる先生。 「ヒロシも図書館に通ってずっと勉強を頑張ってたからな!」 「夏休みはデートも、そっちのけで勉強してたもんね~」 そうだった・・彼女とはデートらしきものも殆どしていなかった・・・ 「それじゃ~ご褒美をあげなきゃな・・・」 お父さんが珍しく僕にプレゼントでもくれるというのだろうか?? 「じゃーん!」 何かのチケットが2枚・・先生の手から見える。 「今度のピアノコンクールの招待券で~す」 ピアノ・・・そういえば、毎年、先生が出ているピアノのコンクールがこの時期、開催されるのだ。 いつも公会堂の定員一杯になるので、なかなか手に入らないチケットだ。 「彼女と一緒に、今度の日曜日にデートでもすれば??」 「引っ越しで忙しい毎日だったからな・・」 「その後は、私と直人さんで食事に行くので、こっちもご褒美なのデース」 うきうきしている先生・・ そういう事ですか・・・・
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加