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──空から女の子が振ってきた。
根暗ハーレム君はたしかにそう言った。
いくらハーレム野郎だとしても、まるで某ジブリのようなことが起きるはずはない、とは言い切り難い。
少なくとも俺、伏宮鳫斗には絶対にない。
まず異性とあまり交流がない。
世話焼きの幼馴染みとか中学のときに助けた女の子とか姉みたいな兄はいない。
「ふっ……。皆、俺の魅力が素晴らしすぎて近付けないんだな。そうだ、そうに違いない!」
キンジの痛い発言の数時間前。
バスに揺られ、泣き叫ぶ。
車内は人がギリギリ普通に立つことが出来るほどの人口密度。
「……やめろ。一緒にいる俺も悲しくなる」
しかし、俺と武藤の周りは見事にエア美少女が囲んでいた。
頭の中では腕に当たっていたりするんだが現実の場合、武藤という横にムサい男がいるだけ。
「何故だ武藤! 何故俺とお前の周りには美少女はおろか女子が集まらない!」
「畜生! キンジと不知火には嫌と言うほど集まるというのに!」
魂の嘆きは女子の好感度を下げる。
証拠として、冷ややかな視線とひそひそと罵倒が飛び交っている。
だがしかし、そんなものは気にならない。
今朝は彼のハーレム野郎に復讐をしてやったのだ。
そう、それは……
「聞け、武藤」
「今度はなんだ」
「我がルームメイトたる男の敵を起こさずにバスに乗ってやっ──」
──鋼色の閃光が走った。
「あっれぇー? 可笑しいな。キンちゃんはもう先に行ったってメールが来てたんだけどなぁ」
「サーセン。あれ俺です」
首筋に刀の冷たい感触。
星伽がヤバい雰囲気を出して佇んでいる。
横の武藤は苦笑いしつつも、チラチラと星枷の胸に視線を向けているのが筒抜けだ。
「星枷、甘いな。この俺を殺れるとでも思っているのか?」
「キンちゃんのためなら神さまでも殺して見せるよ?」
「なんて式さ──」
──再び、俺は口を閉じる。
爆発音。
周囲が黙る。
俺と武藤に向けられていた視線が消える。
爆発音源、煙が立ち上っている箇所を見詰める。
「「あれさ、キンジじゃね?」」
どこかの主人公張りに巻き込まれ体質な奴がまた何かに巻き込まれたのだろう。
俺と武藤は、ほぼ同時に推理した。
「キンちゃん!?」
「……ざまぁ」
「八つ裂きと細切れとコンクリート詰めのどれがいい?」
「サーセン」
ああ、彼女欲しいなぁ……
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