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第一幕
「これで最後、かな?」
「ん、きっちり70枚……ありますね。毎度どうも」
「なーにこちらこそ。ロレンスさんくらいしかこんな山奥まで来てくれないからな。助かるよ」
「代わりに上等の毛皮をもらってますからね。また来ます」
そんなやりとりをかわし、山奥の村を出発したのはかれこれ五時間も前だ。
日が昇ってすぐに出発して、山から下りてきて野に出てきた頃には昼を回っていた。
天気は良く、風もない。
荷馬車に乗ってのんびりと野を行くには絶好の日和だ。
ここのところ寒かったので、もう冬近いと思っていたのが嘘のようだ。
行商人として独り立ちして七年目、年にして二十五になるロレンスは、御者台の上で平和な大あくびをしたのだった。
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