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自由を奪われたこの場所で、シルアは専ら読書に耽った。
無駄に、無意味に広い此処の全てのなかで、この書架だけは無為ではないとシルアは思う。
自分以外に人はなく、誰も何も教えてくれなかったから。
本を読んで、本を読んで、本を読んで。
ひたすら本を読んで、囚われた小さな世界から、広く自由な世界を知った。
本を読んで、人間には“名前”なるものが存在すると知った。
名前だって、好きな本の主人公からとったものだ。
誰もいないこの場所で、シルアはただ、静かに生きていた。
…確かに、生きていた。
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