六月の雨にも溶けない

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痛みはまるで白い肌を切り裂いた傷の赤で、迷子になりそな僕に与えられた逃げ道、光、みたいに鮮明 手を伸ばして、その手ごと、折られる ああ、ああ、ああ、あ、なんてここには、僕一人しかいないのか!体も、声もすべてがばらばらになったみたい、前も見えないくらいの雨に打たれた頭が、また、痛みに、裂かれる ここにいるよ、なんて いえない、わからない、 もう、なにも、みえない 雨は僕達を殴り続ける ここの、ここに、境界線を失った熱だけが留まって、誰もいない、これは誰?これは何?わからないまま、これに飲み込まれていく、それを求める術しかなく、ただ溶けだした熱を絡め、擦りつけ、叩きつけ 君の呼吸を止める、鈍い感覚だけさらけ出して 欲しかったんだ、何かを、何よりも、例えば君が今見ているものを それが消えるように現れ続けるために 従順な、暴力 愛情以上の、殺意 貫く、貫く、君を、ここに、貫く 息が、止まる 雨水を、飲む 熱い、と、冷たい、が 体の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う 欲しいものなら何だって、今なら何だって与えてあげられるよ、ほら、あちこちから、血が流れ始めたんだ 生まれる前に叩き潰された甘味という甘味が、垂れ流れてふたりの間に油をさすんだ 貫かれ、貫かれ、貫かれて 受け止め、受け止めて、目を凝らした ここにいてくれよ、君も溺れていてくれよ、名前を呼んで、掻き消されて、真っ暗になって、ここに、溺れていてくれよ、食べても、ここに沈めても、殺しても、いいから、いいから 絶え絶えに細い息を漏らす 溶けだした瞳の黒を覗き込む 泣き出しそうになりながら、どこまでも閉じ込められた二人が、バカみたいに溺れあっていた 呼吸が静かに消えていく ボロクズみたいに倒れ込んでて、相変わらず雨に打たれて、ノイズ以外何も聞こえなくて、それでも今ここにいるしかないんだって思ってしまう。君と僕はもうここにはいないけど、求めた一つの熱がまた脈打ち始めるんだ。どこまでも、二人で閉じ込められたまま、いつまでも、ここで、このまま。
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