おろし婆

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鏡川。 鏡の様に美しいのか、もしくは鏡の様に全てを映し出すのか、その名の由来は分からない。 その土佐湾からこの国を2分するかの様に流れる川の表に、幾つもの提燈の明かりが紅く揺れる。 1838年1月。 寒い夜のことである。 紅い提燈に照らされて、遊船から明るい歌声が辺りに響く。  土佐は良い国 南をうけて  薩摩おろしがそよそよと  嗚呼 よさこいよさこい 歌い手は随分酔った様子で歌はところどころ調子を外していたが船からは構わず男女の笑い声がしている。
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