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「これをこうして……まるをかいて……」
「まるだっけ……?」
大きな屋敷の広場で、少女が手に持った棒を使って土の上に何かを書いていた。その隣には男の子が座り込んでいて、少女の書いていくものに対して頭を傾げていた。
棒を握る手の大きさが、少女の幼さを表しており、おそらく6歳か7歳だと思われるその少女は、先程から手に合わせて動く自分の髪が邪魔なようで、黄金色に輝く艶やかな髪をいい加減に払った。
「あー、もうっ! こんなにじゃまなかみははじめてよ! おとうさまにいってきってもらおうかしら」
「だ、だめだよ。君のおとうさんだってそのかみがたからものだっていってたよ!?」
「なに、あたしに意見するき?」
男の子は立ち上がって抗議するも、少女の一睨みで黙ってしまった。男の子は少女に逆らえないようで、慌てて目をそらして地面を見つめ、気まずそうに呟いた。
「ぼ、僕も君のかみはすきだから……」
「? なんていったの? きこえないわよ」
「なんでもない! ……それよりも、いいの? こんなところにいて」
「いいのよ。きょうひらかれてるパーティーのしゅやくはあたしだもの。しゅやくはなにをしてもいいのよ」
少女はそう言って、主役の名に相応しいピンク色のドレスの裾をちょこんと摘んだ。
「……たぶんちがうとおもうよ」
呆れたように呟く男の子の言葉を無視して少女は再び地面に何かを書き始めた。
男の子はそんな少女の顔色を伺いながら、なんとか少女の気を引こうとする。
「きょうのパーティーは君のたんじょうびをおいわいするためにひらいたんでしょ。きっと大きなケーキがあるんだろうな」
「パーティーほどつまらないものはないわよ。どうせみんなあたしのおとうさまにきにいられようとしてるだけなんだから」
そんなことを言う少女に少年は目を丸くした。
呆れたような言葉とは裏腹に、目の前の少女が今にも泣き出しそうな瞳をしていることに驚き、そして少年は何故か怒りに近い感情を抱いた。
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