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(あたし! 大きなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!)
(え? 本当? 嬉しいな、大きくなるには綾が嫌いなニンジンも、ちゃんと食べないとね)
(うん! あや、頑張る! だからお兄ちゃんのお名前教えて?)
(―――だよ…)
「ん……ゆ、め?」
『まただ…』
疲れていたりすると必ず見る夢。
幼少の頃の自分と、光で顔が見えない少年と交わす会話はいつも決まっていた。
思い出そうとすると思い出せなくなる。
『夜中の二時か…変な時間に目が覚めちゃったな』
初夏だというのに、夜はかなり冷え込む。
綾はガウンを羽織り、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
一気に水を煽り、豪快に喉を鳴らすと、
かなり喉が渇いていたと言う事に気づく。
ベッドサイドにペットボトルを置いて、
綾はもう一度さっきの夢の内容を反芻してみた。
『あの男の子は一体誰なんだろう……』
布団をもう一度かぶり直して、
考えを巡らせているうちに、
綾はもう一度眠りの淵に落ちていった。
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