第三章 疑惑の男

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「綾ちゃん、このショートケーキできあがったから並べて」 「はい、わかりました」  綾は大学生活と共に、最寄駅近くのカフェでアルバイトを始めた。  人生初のアルバイトだったが、 サークルの先輩であるニ階堂伶二と偶然にも同じバイト先で、仕事の手順や困った時に何かと彼を頼りにしていた。 「綾ちゃん、小説の進み具合どう?」 「え? えぇ…それが全然ネタが思いつかなくて…最近はダメですね」  綾の所属する小説同好会は少人数で、こじんまりとしたサークルだった。  綾は大人数の中で行動するのが苦手だったため、それなりに居心地はいいと思っていた。  小学生の頃から文章を書く事が好きで、あの頃自由帳に書き溜めた小説は、 今考えると稚拙で、お粗末なものだったが、ネタに詰まった時は、 その当時の自由帳を見返したりしていた。 『そういえば、私なんで小説が好きなんだっけ?』
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