311人が本棚に入れています
本棚に追加
/394ページ
こういう時、なんて答えればいいのかは知っている。
だけど、毎回言葉に詰まるのは、
多少罪悪感を感じているからなのか、
相手を傷つけまいと配慮しようとしているからなのか、
綾にはわからなかった。
「ごめんなさい、私、今は誰とも付き合う気ないの」
散々考えた挙句、口をついて出た言葉は、
そんなそっけないものだった。
自分を好きだと言ってくれる気持ちは嬉しい、
けれど綾は笑ってその言葉に頷く事ができなかった。
「そ、そうなんだ、ごめん無理言って、今の忘れてくれていいから、その…また、明日な、じゃあね」
「う、うん」
湯浅は気まずさを隠すように乾いた笑みを綾に向けつつ、
部屋から出ていってしまった。
『私のしたことは、間違ってない』
綾はこの瞬間、いつも自分にそう言い聞かせていた。
でなければ、罪悪感に押しつぶされてしまうのではないかと
錯覚してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!