第一章 追憶の香り

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 相手に好きだと自分の気持ちを吐露するまで、 人はどのくらいの時間を要するのだろう。  それが相手に伝わらなかった場合、 その想いが両断される瞬間は いともあっけなくそして無情だ。       綾はその瞬間の冷淡さを知っている―――。 「あーあ、彼、可哀想だねぇ」 「え?」        なんとなく湿っぽくなってしまった空気を一変するかのようなあっけからんとした声に、 綾は思わず振り向いた。 「お前、大学に入って何人の男ふってるわけ?」    見慣れない学生だ。見た瞬間、綾はそう思った。
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