第一章 追憶の香り

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『あ…なんだろう、これ』  立ち去った青年の後に残った香りが、 ふわりと綾の鼻腔をくすぐった。 すると、綾の脳裏にある既知感が一瞬、 揺さぶられた。 『今、何か頭に浮かんできそうだったんだけど…気のせい?』 「綾ー! ここにいたんだ、授業終わったんでしょ? 早く帰ろ」 「あ…う、うん」  友人の声に綾が我に返った時にはもう、 どんな既知感を感じたのかさえ思い出せなくなってしまっていた。
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