第二章 彼の名は…

2/6
前へ
/394ページ
次へ
「えー! あんた、湯浅君の告白断っちゃったの!?」 「シーッ! 沙織! 声がでかい」  大学の帰り道、いつもの喫茶店で綾は馴染みの友人と立ち寄っていた。  秋山沙織とは高校時代からの付き合いで、 唯一親友と呼べる関係だった。 竹を割ったような性格で、綾とは正反対だったが、 何故か一番気兼ねなく何でも話せる仲だった。 「ご、ごめん、だって、あんたたちあんなに仲良さそうだったのに…」 「う、うん、友達ならよかったんだけど、いざ付き合うってなったら、ちょっと違う気がし て…」  綾が言葉を濁しながら言うと、沙織は盛大にため息をついて、 窓の外に目を向けた。  そして、何か思い出したように身を乗り出すと、沙織は小声で綾に言った。 「え? ち、違うよ! そんなんじゃない! ……あ、ごめん」  突拍子もない沙織の言葉に、思わず綾は大きな声を出して、 はっと我に返った。 「それならいいんだけど、せっかくの学生ライフ! エンジョイしなきゃもったいないよ!」 「うん…そうだね」 『わかってる…いつまでも過去にこだわってるのは私だ…』
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

314人が本棚に入れています
本棚に追加