314人が本棚に入れています
本棚に追加
「えー! あんた、湯浅君の告白断っちゃったの!?」
「シーッ! 沙織! 声がでかい」
大学の帰り道、いつもの喫茶店で綾は馴染みの友人と立ち寄っていた。
秋山沙織とは高校時代からの付き合いで、
唯一親友と呼べる関係だった。
竹を割ったような性格で、綾とは正反対だったが、
何故か一番気兼ねなく何でも話せる仲だった。
「ご、ごめん、だって、あんたたちあんなに仲良さそうだったのに…」
「う、うん、友達ならよかったんだけど、いざ付き合うってなったら、ちょっと違う気がし
て…」
綾が言葉を濁しながら言うと、沙織は盛大にため息をついて、
窓の外に目を向けた。
そして、何か思い出したように身を乗り出すと、沙織は小声で綾に言った。
「え? ち、違うよ! そんなんじゃない! ……あ、ごめん」
突拍子もない沙織の言葉に、思わず綾は大きな声を出して、
はっと我に返った。
「それならいいんだけど、せっかくの学生ライフ! エンジョイしなきゃもったいないよ!」
「うん…そうだね」
『わかってる…いつまでも過去にこだわってるのは私だ…』
最初のコメントを投稿しよう!