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大好きだった福田先輩―――。
高校二年の春、綾は卒業間近の先輩に意を決して告白した。
けれど、先輩にはすでに彼女がいた。
その彼女の前でひどいフラれ方をして、どしゃぶりの雨の中、
泣きながらがむしゃらに走って、
途中で知らない男の人にぶつかったのを覚えている。
『好きになって、想いを告白するのに1年かかった。
だけど、フラれる時は一瞬だ』
綾はそれ以来、人を好きになることを忘れた。
あんなに先輩を見るたびに心臓が高鳴って、
息もできないくらいだったはずなのに、
もうその感覚すら思い出せなかった。
『そういえばあの時、大切にしてたネックレスもどっかいっちゃったんだっけ…あの日ほど厄日に思ったことないな…』
伏し目がちになって過去を振り返っている綾を、
沙織は何も言わずいつまでも見据えていた。
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