魔人の脱獄

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世界は腐っている。 そんな言葉はもう聞き飽きた。 本当に腐っているのは世界ではない。 人間だというのにーーー。 「あ~、頭いてぇ・・・」 男は一人牢の中で頭を摩る。 薄い月明かりが照らすのはその男の頭の傷跡。 誰かに殴られたのかタンコブになっているのが分かる。 これは先日この刑務所の中で他の囚人と喧嘩した時の傷であった。 「ったく・・・殺す覚悟のない奴が俺と喧嘩なんて100年早いんだよ、クソが!!」 そう言ってまた頭を摩る。 薄汚れたベッドに腰を掛けた男はしきりに貧乏ゆすりを始めた。 ドンドンドンドン。 静かな務所内ではそんな些細な音さえもうるさく聞こえた。 当然そんな音を立てれば監守が見に来る。 今回も例に漏れず監守が様子を見に来た。 「おい、何をしている・・・って貧乏ゆすりか」 はぁっとため息を一つ。 どうやら呆れているようだ。 「お前少し前に問題起こしたばっかりだろ?いい加減大人しくしないと刑期が一向に減らないぞ」 それに対して無反応な男はまだ貧乏ゆすりを続けている。 痺れを切らした監守は牢に近づき鉄格子を両手で握り締める。 「おい!!聞いているのか!!・・・クソ、せっかく優しく話しかけてやれば調子に乗りやがって」
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