魔人、少女と出会う

2/8
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「俺か?俺は人間だ」 炎の中から声が聞こえた。 ーーここはどこだ? 燃えるように赤い髪。 射抜くような鋭い赤目。 顔には包帯がぐるぐる巻きに巻いてあり、顔の良し悪しは分からない。 ただ、人間にしては不気味すぎるほどのオーラを身に宿していた。 「にん、げん?」 アリアスは気が遠くなる想いだった。 人間を狩る悪魔が降臨したと思ったのにも関わらず、実際は人間だという。 「そんな・・・そんなぁぁぁ」 泣き崩れるアリアス。 嗚咽は留まることを知らない。 「逆に聞くが・・・お前は悪魔か?天使か?」 「私が答えよう!!その娘は魔族だ!!」 弾き飛ばされたベルクトはよろめきながらも包帯男に笑みを浮かべる。 「答えろよ」 包帯男はアリアスの正面に立つと顔を覗き込む。 アリアスは顔を見られまいと必死に顔を反らせた。 「その娘は大罪を犯した!!だから死刑にするんだよぉ!!」 「取り敢えず縄を切るか」 包帯男はポケットからガラスの破片を取り出すと縄を切り始めた。 「アンタ人間のくせに私の縄を切るってどういうことよ?」 「うっせ、黙ってろ」 「え?」 包帯男は立ち上がると回し蹴りをした。 ゴキっという音に合わせて何かが倒れる音がした。 「さっきから後ろでうるせーんだよ、ぶつぶつと。よし切れた。んで話は戻るがお前は悪魔?天使?」 「ま、魔族・・・」 「魔族かそうか魔族か・・・う~ん。変なとこ来ちまったと思ったがこれはこれで面白いか」 「おいお前ーー」 「おい女。名前は?」 「あ、アリアス」 「良い乳だ」 アリアスは真っ赤になって胸を隠した。 包帯男は楽しそうにニヤニヤしている。 「んじゃ行くぞ。助けた分はきっちりとこの世界のこと聞かせてもらうぜ」 「ええ、ちょっと待ってよ!!」 包帯男はアリアスを片手で抱っこすると処刑台から降りて適当に歩き始めた。 「私の話を聞けってば!!」 「私の話を聞けぇぇ!!」 ベルクトとアリアスの声が重なる。 包帯男が振り返るとサーベルを持ったベルクトが構えていた。 「やっと私の話をーー」 「うるせぇって言ってんだろうが豚野郎」 包帯男が手をベルクトに向ける。 「消えろ」 ベルクトの足元から火柱が迫る。 ベルクトはその炎に巻かれ一瞬にして生涯を終えた。 「べ、ベルクトが死んだぞ~!!」 「に、逃げろ~!!」
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!