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「おお~すげぇ。マジで出たよ。これって魔法なんだよな?」
「いえ、これは魔法なんかじゃないわ・・・。これは・・・煉獄」
「煉獄?」
「魔族の王族にしか使えない炎よ・・・アナタ本当に人間?」
「むしろお前が魔族ってのが信じらねーよ・・・にしても」
処刑場のを取り巻く空気は異常だった。
皆が死にたくない、早く逃げたいという思いに駆られているからだろうか。
ひどく醜い。
「うるせえって言ってんだろ・・・何度も言わせんなカス」
包帯男はアリアスを下ろすと、両手を広げる。
そして勢いよく手のひらを重ねた。
「煉炎」
頭にふっと浮かんだ呪文。
それは辺りを火の海にするのにそれ程時間はかからなかった。
「こんがり・・・燃えてやがる。ま、これで静かになるだろ」
「・・・」
アリアスは見とれていた。
一面を焦がす炎。
魔族の王だけが使用できる唯一にして最強の炎ーー煉獄。
それは王の感情によって色を変え、世界を炎で焦がす。
「これが、これが・・・」
魔族が求めて止まなかった王の帰還。
今ここに為された。
「みんな・・・やったよ。王様が・・・王様が帰ってきたよ!!」
震えが止まらない。
父が、友達が、仲間が、同胞達が夢見た光景がここにあった。
「そうよ、燃えろ!!燃えろ!!燃えろ!!皆燃えちゃえ!!」
「いきなり何だ?お前頭大丈夫?病院行くか?」
「王様!!私のお願いを聞いてください!!人間をーー!!」
そこでアリアスの意識は途絶えた。
この日、街にいた人間は一人残らず消え、その後の消息は分からない。
ただ、鬼の笑い声だけが街に木霊していたという。
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