魔人、少女と出会う

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ーーーーーーー 「ううん・・・はっ!!」 アリアスが目覚めたのは翌日の昼ごろだった。 日はとっくに登っていてこれでもかというくらい日差しが強かったりする。 「ここは?」 ーー最近こんなことばっかりだ・・・。 目覚めると現実がガラリと変わっている。 毎回悪い方にしか変わらない為、アリアスは怯えながら部屋を見渡す。 どっからどう見ても人間の民家である。 ベッドからは人間のイカ臭い匂いがして、鼻を抑えた。 「最悪・・・」 体にかけられていた布だけはやけに綺麗で変なニオイもなかった。 やたらと変な刺繍がされているあたり、相当高いのではないだろうか。 「これ、もらっちゃって良いかしら・・・」 「好きにしろよ」 「それじゃあ、遠慮なく・・・ええええ!!!」 声のする方へ顔を向けるとそこには包帯男が手に暖かそうな昼食をもって部屋に入ってくるところだった。 アリアスのお腹がくぅっと鳴る。 沈黙・・・。 「食べたいのか?なら交換条件で俺の質問に答えろ」 皿をテーブルに置くと、アリアスは皿にかじりつく。 「おい、皿ごと食うなよ」 「ふぁふぁふぇわふ」 「もういい食べてろ」 包帯男は両手を合わせて「頂きます」っと礼をした。 ーーこの人間、宗教でもやってるのかしら。 魔族には宗教がない。 王こそが全てであるからだ。 そしてその王が目の前にいる。 よく見ると傷だらけの王様だが・・・。 「お名前を教えてください」 「秋春だ。お前は?」 「アリアスです」 ・・・。 ーー会話が繋がらないよぉ。 いつもはもっとフレンドリーな彼女だが今回ばかりはお手上げだった。 王が人間。 それは魔族の誰もが想像できなかった不測の自体だ。 人間を頂きにあげるというのは今では難しい。 「お前魔族なんだよな?」 「ふぁい」 「種族は?」 「ふぁひゅふぁふ」 「サキュバス!!・・・サキュバスって皆こんなチンチクリンなのか」 「う、うるさいわね!!」 「いやすまん、胸だけは別だ」 包帯男もとい秋春は彼女の胸に謝罪をする。 「どこに謝ってるのよ」 「もちろん、おーー」 「もう良いです」 はぁっとため息を一つ。 ーーほんとにこれが王様なのかなぁ。 にわかには信じられない話だった。
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