魔人、少女と出会う

8/8

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「魔族のアンデット?そう言う種族なのか?」 「違うわよ。死んだ魔族を生き返らせるとこうなるの。高位の魔族は体を利用されないように死んだときに砂になるように体が構成されてるんだけど、下位の魔族だと死んでも人間と同じように残るのよ・・・」 「で、それを利用されたのか」 「こんなことまでするなんて・・・人間は絶対に滅ぼさないと」 ぎゅっと拳を握り締めるアリアスを楽しそうに見る秋春。 「俺は戦えるなら何でも良いぜ。戦ってればその内強いやつとも戦えるだろう」 「秋春は自分のことしか考えないのね」 「当たり前だ。人間はそんなもんなんだよ」 「だから人間は嫌い」 それっきり会話もなく、城を歩き回った。 結局最上階の王族が使っていただろう部屋を少し改装し、二人は別々の部屋で寝ることになった。 ーーーーー 「眠れない・・・」 アリアスはため息を付いてベッドに腰掛けた。 ーーこんなことは初めてだ。 今までどんな騒がしいところでも寝れた。 ボリスや皆の騒ぐ声が彼女の子守唄だったのだ。 それが今や永遠に失われてしまった。 「皆先に逝っちゃうなんてヒドイよぉ」 頬を伝う雫はポタポタとシーツを濡らす。 こんなはずじゃなかった・・・。 「ボリス・・・」 今は亡き父の名を呼ぶ。 「最後までお父さんって呼べなかったなぁ」 声は震え、涙は止まらない。 「秋春は起きてるかな・・・」 アリアスは立ち上がると部屋を出て隣の秋春の部屋のドアをノックする。 「秋春、起きてる?」 「・・・」 秋春は寝ているのか返事がない。 「入るね」 ドアをゆっくりと開けるとベッドには無防備に寝顔を晒す秋春がいた。 「寝る時まで顔に布を巻いてるなんて」 クスっと笑うと秋春の寝顔を観察する。 「どんな顔をしてるんだろうなぁ」 今すぐにでも布をはずしたい。 ーーでも。 「いつか私に素顔を見せてくれる?」 アリアスは秋春のベッドに潜り込むと秋春の胸に頭を押し付け、丸まるようにして目を閉じた。 不思議と先ほどまでの悲しみが薄らぎ、冷えた心が温まっていく。 「不思議・・・やっぱり秋春はボリスみたい」 すると、秋春の腕がアリアスを抱くように動いた。 アリアスは一瞬ビクっとなったがやがてその腕を受け入れるように力を抜いた。 「おやすみ・・・秋春」 窓から差し込む月光が二人を照らす。 二人はそのまま安らかに眠りについた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加