20人が本棚に入れています
本棚に追加
勇者の一日
「勇者様・・・お待ちください」
金色の腰まで届く髪を靡かせて彼女ーーメリル=アデーレは勇気に話しかける。
「お願いです・・・一人にしてください」
勇気は顔を歪めながら嘆願する。
それもそのはず。
メリルは勇気の着替えを手伝おうとしているのだから。
「いえ、是非私にお着替えの手伝いをさせて頂きたいのです!!」
「僕は一人で出来ますから!!」
一向に譲ろうとしないメリルから着替えの服を奪い取って、勇気は逃げ出すように部屋を飛び出した。
「もぉ・・・恥ずかしがり屋さんなんですからぁ」
残されたメリルは微笑みながら乱れた布団を綺麗に整えていくのだった。
「はぁ、参ったなぁ」
勇気は着替えた服を抱えて中庭を歩いていた。
生活も文化も違うこの世界でやっていけるのだろうかと勇気は内心不安だった。
「あれ?勇者様じゃないですか」
「えっと・・・ミナ?」
「まだ覚えてないの?ひどいなぁ」
言葉とは裏腹に表情は楽しそうにしていた。
勇気が見つめているとミナはコロコロと表情を変えた。
思わず勇気は顔を赤らめて目をそらした。
「ふふふ。勇気可愛いの~」
ミナはからかうように勇気の顔を覗き込む。
艶やかな黒髪から香る甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「えっと・・・ミナは何やってるの?」
「私?私は近接戦闘の訓練だよ」
最初のコメントを投稿しよう!