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「おい、早く降りてこいよ逃しちまうだろ?」
「無茶言わないでよ・・・私まだ羽根も生えてないんだから・・・」
「栄養が全部乳にいってんだな・・・」
「うっさい!!」
アリアスは勢いにまかせて窓から飛び降りた。
それを秋春が軽く受け止める。
「確かこっちだったよな」
「そっちだったかしら・・・?」
アリアスは見つけてしまったのだ。
城の4階の窓からチラリと見えた人影を。
ーーあれは魔族じゃなくて人間だ。
もし秋春を暗殺に来た人間であれば相当な手練のはず。
一人しか見えなかったが集団の可能性もある。
狙われているであろう当の本人は警戒心など微塵もない。
好奇心に駆られて走る。
慌ててアリアスも追いかけるがありえないほど速い。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「早くしろよ逃げられちまうだろ」
「速すぎんのよ!!」
もう少しで目的の場所に着いてしまう。
アリアスの一瞬の視線で場所を特定してしまう秋春の無駄な才能を呪いつつもアリアスは周囲を警戒した。
「到着っと・・・あぁん?」
「待ちなさいってば・・・ってどうしたのよ・・・うわっ」
彼らが見たものは壮絶な光景だった。
家のドアは開けっ放しだったので直ぐに目的の人物は見つけられたのだが。
「こいつなんだ?」
「たぶん奴隷かな」
「ほう」
秋春達の話し声が聞こえていないのか振り向きすらもしない。
そして必死に鍋に残っていたらしきシチューを頭を突っ込んで飲んでいた。
「おい」
ズズズズズズズズズズズズ。
「おい」
ズズズズズズズズズズズズ。
「てめぇ・・・」
秋春が手を相手に向ける。
それだけで鍋の底にあなが開いた。
「あああああああ。シチューがぁぁぁぁ」
底から垂れ地面に落ちたシチューを犬のように舐めまわす。
あまりの光景にアリアスは目を背けた。
「なんだこりゃ?」
「奴隷身分の人間はご飯なんてほとんど貰えないのよ。死ぬまでこき使われて使えなくなったら簡単に捨てられるか処分されるのよ。多分この国で飼われてて秋春に主人殺されちゃったから今までの欲望が一気に湧き出たんでしょうね。見てて気持ちが悪いわ」
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