1章

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 暑い。純粋に暑い。 部屋を照らす唯一の光を放つ我が親友を前に俺、戸河家治(トガワ イエハル)は思った。 「何で停電になるんだよ!!」 そう。俺は今究極にピンチなのだ。 原因不明の停電。 幸い我が親友…パソコンは充電してあったため使えるが、部屋の照明やクーラーが使えない。 パソコンも、いつ充電が切れるか…考えただけで恐ろしい。 必死に情報を集めようと暗闇の中パソコンをいじる俺の姿は、傍から見ると危ないオタクに見えるに違いない。 いや、実際そうなのだが。  今年で18になる俺は、ゲームを買いに行く以外外に出た記憶がない。 苦労して入った高校も、結局合わず1ヶ月で中退。 それ以降は外よりも中で暮らす方が楽しく、自宅警備員という立派な職に就きながら人生を謳歌している。 無論、趣味や特技はある。 右手でパソコンをいじり、左手でタッチ式ゲームをする時が何よりも楽しい。 ま、ゲームは基本半日でクリアしちゃうけど。 「っつか、いつになったら電気付くんだよ…」 面倒くさいのが理由でしばらく髪を切ってないせいもあり、この暑さと暗さでストレスが一気に増す。 両親は仕事でいないし、ブレーカーもあてにならない。   あぁ、俺が何をしたというんだ。 何かしたといえば大人のサイトに登録したとき、今年で20歳になるように生年月日を変えたくらいじゃないか。 停電め、貴様かなりの鬼畜野郎だな。 苛立ちが最高潮に増してきたとき、まるで俺の思いが通じたか、部屋中が明るくなり涼しい風が俺の髪をゆらした。 「キター(・∀・)ーー!」 ありがとう神様。アーメン。 今までの苛立ちを消し去り、俺はさっそくいつもの作業に取り掛かる。
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