第弐話 最強の武人

3/4
前へ
/24ページ
次へ
私の全てが変わった…気がした。 旅の道中、偶然見つけた村で、しばらくここに留まる事を決めた。 宿を見つけ、やっと休めるかと部屋を借り、そのまま寝台へと腰掛けた。 訪れた村は『平穏』がよく似合っている。 そのまま私は、久々に何も考えず、この『平穏』の中で眠りについた。 けど、これが悲劇の始まりだった。 夜になると、賊が来たと騒ぎが起こる。 賊が夜襲なんて結構珍しいことだった。 私が得物、方天画戟を持ち宿から出た時は、既に賊は村の中まで迫ってきた。 私は後悔した。 起きていれば、警戒すればこんな事にはならなかった。 とにかく、一人でも多くの者を守ろうと、得物を振るった。 そして、幾人か助けた時、珍しく賊に対抗している『男』がいた。 「俺の平穏を…返せぇ!」 賊数人に囲まれており、それを棒で撃退する。 武器を持っている相手に、棒で対抗する男。 私は、その男に興味を持った。 初めて私が、男に興味を持った瞬間だった。 「むん!」 体重を使った、素早く、そして鋭い突き。 あの強さは確実に将になれる程のものだった。 ただ、まだ一つ足りない。 賊を気絶させるが、再び賊に囲まれる。 応戦しようと男は再び棒を構えるが、棒は2つへと折れ、手に武器が無くなった。 戦いを挑むからには死ぬ覚悟もいる。 人を殺す事を躊躇している。 「…まだ、未熟…」 形勢逆転。 賊は倒れた男を取り囲み、そのまま止めをさそうとする。 けど、あの男には興味が湧いた。 初めて興味を持った男を、何故か分からないけど、育ててみたいと、私は思った。 一人の、呂奉先という武人として。 故に、私は… 「…立って」 『彼』を助けた。 一方的な虐殺。 それが本来、言うべき台詞なのだが、俺には芸術にしか見えない。 最低だ、などの言葉を受けるかもしれない。 だが、だからこそ美しいのかもしれない。 最低を背負い、人を殺してまでも守る、その立つ姿。 俺は彼女に、憧れた。 「待てぃ!」 一人、今までとは違う、大きな戦斧を得物として担いでいる大男が来た。 屍となった仲間を見ながら。 「…貴様がやったのだな?」 「…ん」 二人の会話を聞いているのだが、二人は冷静そうに見える。 だが、得物を持つ手はキリキリと力が込められているのは見える。 漸く俺は立ち上がり、二人の
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加