第参話 武

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目の前にいるのは、自分を殺そうとしている奴だ。 戦斧を担ぎ、見下しているかのような笑みを浮かべている奴だ。 だが、このまま人を殺してしまって良いのだろうか。 相手は賊とは言え人だ。 人を殺すとなれば、躊躇わない方が変だ。 初めてであればあるほどに。 「来ないならば、俺から行くぞ」 途端、目の前の男が戦斧を振り下ろす。 途端の事だった故に、左右へ避ける事は困難。 無理矢理だが、後方へと回避をする。 「ちぃ、大人しく斬られれば楽になれるのによ」 敵は、戦斧を右手だけで担いでいる。 どれ程腕力があるのか。 地面にめり込んだ戦斧を引っこ抜き、次への動作へと移ろうとしていた。 「とっとと斬られろ!この軟弱男がぁ!」 まだ当ててもいないのに何が貧弱だ。 ともかく、今度は大きく戦斧を横へと振るって来た。 見える、寧ろ振りが大きく、攻撃が予想出来る。 だが、一回でもあれに当たれば確実に死ぬ。 それを考えれば、とてつもなく脅威に思えた。 「くっ!」 その場でしゃがみ、胴体真っ二つは避ける。 次は何が来るか、相手を見て次の回避へと移る。 蹴り、予測も出来たし、動作からも察せる。 相手から来る蹴り、それを左へと避け、槍の刃のついていない部分を使い、そのまま突く。 「ぐふっ!」 感触が有り、当たったのだと判断出来る。 相手は腹を抑え、睨み付けている。 「貴様ぁ!先から姑息な手をぉ!正々堂々と戦えぇ!」 途端、その男の後ろから声が飛んでくる。 その男の後ろを見ると、数十名の賊が俺に批判の声を浴びせてくれ。 とっとと斬られろなどの声が数々。 気分は最悪だ。 だが、同時に好機でもあった。 ここでこの男さえ倒せれば、勝利は確定するのだから。 「ならば、攻撃を当てれば良いだけの話。ここからは、俺も攻撃するぞ!」 今までの動きにて、全て敵の動きが見えた。 勝機が見えた俺は、その勝機をものにするべく、そして勝利を掴むべく、足を踏み込んだ。 やはり、私の目に狂いは無かった。 あの男は、何かが違う。 この世は女尊男卑。 権力的にも、力でも男は女に劣る。 だが、今槍を持ち、戦いを挑む男は違った。 女尊男卑、だから何だと、その武力が語っているかのようだった。 勇ましく、女にも劣らない強さが在った。 私は、あの男、いや、『彼』をもっと知
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