第肆話 目標

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だが、少し考えてみればこの考えも有る。 あの武芸を、多少なりとも盗めるかもしれないと。 「分かりました。私では貴女に敵わない。しかし、全力で武を振るわせていただきます」 渡された棒を持ち、即座に構える。 彼女は、戟を後ろに投げ、そして何処から出したか分からないが俺のよく使っている鍛練用の棒が取り出された。 「いったい、何処から出したのですか?」 「…今は、恋と戦う」 彼女、相手の構えは右手に棒を持ち、何の構えもせずにただ立っているかのようなもの。 だが、その威圧感は凄まじい。 何処から行っても、何をしようとしても結果は負ける、その考えしか浮かばない。 「…行く…!」 「いざ!これが私の全力です!」 そして、開始から数十秒。 鍛練用の棒一本が宙を舞った。 「少しは手加減してくださっても…いてて」 「…手加減、したつもり」 「…どれだけ弱いんだよ俺」 結果、一回も勝てずに終了した。 武器を振るえば弾かれそのまま吹き飛ばされる。 防いだと思いきやそのまま体ごと宙に舞う始末。 ボロボロの俺と彼女は休憩(主に俺のための)を取る事に、壁に背中を預け、そのまま腰を下ろしている。 武芸を盗む等考えていながらこの結果は本当に笑えない。 もう嫌や… 「…名前」 「はい?」 「…名前、教えて」 突然、隣に居る彼女が名前を訪ねてきた。 そういえばと、名前をまだ互いに明かしていないままだった事に気づく。 隣に同じく腰を掛けている彼女の前へと立ち上がり、頭を下げる。 「私は宣高という者です。姓名は臧覇、気軽に姓名の方でお呼びください。私の命の恩人故」 頭を上げ、彼女の顔を見ると多少笑っていた。 堅苦しくしたのがいけないのか、自身の頬が熱くなる。 「…恋は、奉先(ホウセン)。呂布(リョフ)、奉先。真名は…恋(レン)」 ここで、聞き慣れない言葉が出てきた。 彼女、呂布は『まな』とやらを恋と名乗ったが、俺には『まな』とは何なのか、全く理解出来ない。 「すみません、『まな』とはいったい何なのですか?」 そして、俺は奉先さんから『まな』について聞いた。 『まな』とは、そのままの“真の名”という意味。 真名は、とても重要なもので、その名は自分自身を現す程に必要な名前だそうだ。 真名を呼んで良いのは、本人が真名を呼んで良いと許した者、親以外に勝手に呼んでは大変失礼なものらしい。
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