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目が覚め、目の前に広がっていたのは古い木の天井だった。
いつのまにか俺は寝台に寝ていたのか、俺の記憶にそのようなものは無い。
いつ寝ていたのか、いつ寝たのか、それすらも記憶がない。
頭が酷く痛く、今この時点で起き上がるのは自分自身、無理がある。
今までに味わった事がない頭痛。
貧血で立ちくらみ、そのようなものでもなく、風邪やインフルエンザなどで高熱を出した時程酷くはない、今までになかったこの頭痛。
ただ何となく寝ていたかった。
今何が起こっているのか、それすらも考えるのがだるくなった。
結局、眠気には負けてしまう。
どうせ自分の家だと、勝手に自分自身で結論付け、寝返りをした時だった。
景色は天井から変わり、自分の真横の景色が写る。
真横には若干古い木の床に、鏡と木箱以外何もない狭い部屋が広がっていた。
「…ここは…!?」
ガバリと布団から起き上がる。
眠気、頭痛よりも今この現状の『混乱』が勝り、それを気にしている暇など無くなった。
今自分の寝ているもの、それはベッドではなかった。
ただ、敷き蒲団が床に掛かっており、そして掛け布団があるのみ。
漸く、俺自身もこれは不味い状況だと理解した。
脳内は『混乱』で埋めつくされ、今何をしていいのかすら分からなかった。
手を床につき、勢いよく立ち上がったのだが、これもまた異変に気づいた。
いつもより視線が高く感じると。
自分の体に視線をやる。
すると、着ている服も違った。
全て灰色で、昔の民が着るもののような格好。
コスプレが趣味ではない筈だ。
まさかとは思うが、謎のコスプレ欲にでも目覚めてしまったのか…。
いやいやあり得ない…。
兎に角、今は冷静になる事を優先させよう。
そう自分に言い聞かせ、寝るだけの為に作られたかのような狭い部屋に唯一あるもの、鏡を覗く。
そこに立っていたのは、黒髪の自然体で、凛とした顔立ち、厳しそうな鋭い目、しかし、よく見るとその中に優しそうなものも見えた。
「…誰?…これ、俺?」
本当にこれが自分の姿なのか疑わしく、試しに右手を頭に乗せた。
当然、鏡の中の自分も同じように動く。
まさかとは思うが、これは憑依というやつなのだろうか…。
試しに、そのまま頬を軽くつねる。
自分の妄想か、夢であってほしいと願って。
「っ!?いでででぢだぃあふぃ!?」
俺自身、いったい何語を喋ったのかわからない奇声を上げた。
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