プロローグ 憑依

2/3
98人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
目が覚め、目の前に広がっていたのは古い木の天井だった。 いつのまにか俺は寝台に寝ていたのか、俺の記憶にそのようなものは無い。 いつ寝ていたのか、いつ寝たのか、それすらも記憶がない。 頭が酷く痛く、今この時点で起き上がるのは自分自身、無理がある。 今までに味わった事がない頭痛。 貧血で立ちくらみ、そのようなものでもなく、風邪やインフルエンザなどで高熱を出した時程酷くはない、今までになかったこの頭痛。 ただ何となく寝ていたかった。 今何が起こっているのか、それすらも考えるのがだるくなった。 結局、眠気には負けてしまう。 どうせ自分の家だと、勝手に自分自身で結論付け、寝返りをした時だった。 景色は天井から変わり、自分の真横の景色が写る。 真横には若干古い木の床に、鏡と木箱以外何もない狭い部屋が広がっていた。 「…ここは…!?」 ガバリと布団から起き上がる。 眠気、頭痛よりも今この現状の『混乱』が勝り、それを気にしている暇など無くなった。 今自分の寝ているもの、それはベッドではなかった。 ただ、敷き蒲団が床に掛かっており、そして掛け布団があるのみ。 漸く、俺自身もこれは不味い状況だと理解した。 脳内は『混乱』で埋めつくされ、今何をしていいのかすら分からなかった。 手を床につき、勢いよく立ち上がったのだが、これもまた異変に気づいた。 いつもより視線が高く感じると。 自分の体に視線をやる。 すると、着ている服も違った。 全て灰色で、昔の民が着るもののような格好。 コスプレが趣味ではない筈だ。 まさかとは思うが、謎のコスプレ欲にでも目覚めてしまったのか…。 いやいやあり得ない…。 兎に角、今は冷静になる事を優先させよう。 そう自分に言い聞かせ、寝るだけの為に作られたかのような狭い部屋に唯一あるもの、鏡を覗く。 そこに立っていたのは、黒髪の自然体で、凛とした顔立ち、厳しそうな鋭い目、しかし、よく見るとその中に優しそうなものも見えた。 「…誰?…これ、俺?」 本当にこれが自分の姿なのか疑わしく、試しに右手を頭に乗せた。 当然、鏡の中の自分も同じように動く。 まさかとは思うが、これは憑依というやつなのだろうか…。 試しに、そのまま頬を軽くつねる。 自分の妄想か、夢であってほしいと願って。 「っ!?いでででぢだぃあふぃ!?」 俺自身、いったい何語を喋ったのかわからない奇声を上げた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!