第壱話 一時の平穏、崩れる平穏

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「…明日、良い事あるかなぁ…」 俺でもわかる、実に呑気な台詞を吐きながら、眠りについた。 が、その時だった。 「賊だぁぁぁ!賊の集団が攻めてきたぞぉぉ!」 外からは鉄を叩きつけ、音を鳴らしている見張りの焦りのある声。 「何…!?」 あまりに唐突の出来事故に、今の状況が理解しきれなかった。 何故、賊が攻めてくる…! 平和で、穏やかな生活を何故乱すんだ…! だが、俺に何が出来る? 武器は?何もない。 見逃してもらう?だがどうやって? 何度も、何度も自問自答の無限ループを自分自身に問いかける。 だが、今しなくてはならない事は理解出来ていた。 先ずは逃げる事…それしか出来ない…。 「くっ…!」 慌てて家を飛び出し、そのまま駆けて逃げてしまおう、そう思っていたのだが、逃げ道が分からない。 民達は混乱し、道に散らばり行く道を塞ぐ。 泣き叫ぶ子、子を探す親。 だが、それすらも巡り合わせる時間をもくれない。 「狩りの時間だ!辺り構わず奪いつくせぇ!」 時既に遅し、というものか。 賊と思わしき者達は、剣を掲げて民達を襲いつくす。 男は殺され、女は犯され、欲望のままに動く者達が、目の前に広がっていた。 「な…なんだよ…これ…?」 今まで平和に生きれていただろ…? 平和を…平穏を…何故奪う…? この初めて見る、残酷な光景に恐怖を感じた。 だが、その恐怖の中に確かな怒りもあった。 「おいあんた!金目のもん持ってねぇか?身ぐるみを寄越しな。さぁ選べ、金目のもん渡して殺されるか、殺されて金目のもんを奪われるか…」 3人程の武器を持った賊どもが、俺の目の前まで来る。 脅され、剣を突きつけられている。 ヘラヘラと笑う賊に、怒りが湧いてくる。 「返せ…」 「アン?」 拳に入る力が強くなる。 背後には立て掛けてある鍛練用の棒。 後ろに下がり、その棒を右手に掴んだ。 「俺の平穏を…返せぇぇ!!」 「ガッ!?」 一人の賊に思いっきり棒を顔面に突く。 その賊は気絶をし、残る二人はまさかの反撃に驚愕の表情を浮かべる。 好機…! 「むんっ!」 そのまま一人の賊と同様に、残る二人も顔面を突き、そのまま気絶。 凄い…、体がこれ程までに自然に動くとは…。 だが、その行動はそれで災いを呼んでしまった。
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