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初体験は、緋呂先輩ではなく、秋と。
今まで何度か彼氏ができたことはあったけど、カラダを許したことはなかった。
周りいわく、「ガードの固い女」。
秋としたのは、私の意志なんかじゃない。
一言で、単刀直入に言えば。
レイプ。
あの日、私はコンクールが近くて。
毎日のように、放課後は音楽室に通いつめていた。
グランドピアノを借りて、ひたすら練習。
緋呂先輩とは、付き合いたてだった。
このころは緋呂先輩は浮気なんかしなくて、…してるの知らなくて、幸せだったころ。
緋呂先輩の笑顔が頭に浮かび、ピアノを弾きながら自然と顔がほころぶ。
―――そこへ。
カラカラと、静かに引き戸の開く音がして、目を向けると。
見知らぬ男子生徒が、立っていた。
…いや、見知らなくはない。
たしか、同級生にいたような気がする。
噂では「モテる」らしい。
名前は、たしか―――
「澤田…秋」
思わず、声が漏れてしまい。
不意に、彼と目が合った。
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