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小さくふぅっとため息を吐き出した楓ちゃんが言葉を続けた。
「…だけど…
祐弥は…気がつけばいつも私のそばにいて…
いつでも私を守ってくれてて…」
そう言いながらポロポロと涙を溢れさせた楓ちゃんにますます僕の胸が苦しくなって行く。
…だけど僕は、王子様だから。
雫になんて言われようと…
作り笑いを浮かべて行くしかまだ生き方を知らない。
「楓ちゃん…
君は今、誰と一緒にいたい?」
もう一度その言葉で楓ちゃんの背中を押した。
これが僕の選ぶべき道だから。
…だって…
子供の頃、母さんがいつも言ってた僕の名前の由来。
『大空を飛び回る鳥たちも
大地に芽吹く蕾も…
全ての命を照らしてあげれるのが太陽だから』
自分が愛しいと思える人の幸せを願うのもひとつの愛の形なんだろう。
「早く…行ってあげなよ。
そして自分の思いを祐弥に伝えてあげなきゃでしょ?」
僕を見上げる楓ちゃんの頭を優しくポンポンと叩いてあげる。
雫や雪乃にそうして来たように…
「先輩っ…ありがとうございました!」
ペコンと頭を下げた楓ちゃんが、急いでドアを開いて駆け出して行く。
その姿を見つめながら僕は力なく笑った…。
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