曖昧な関係

2/12
前へ
/85ページ
次へ
2時限目の古典の授業中。 窓の外から聞こえる賑やかな声に誘われてグラウンドに目をやると、1年生が体育の授業でハンドボールをやっている。 「雫ちゃんこっちこっち!」 ショートカットの勇ましそうな女の子に声を掛けられ、これまた勇ましそうに駆け回る雫の姿。 子供の頃は良く熱を出してて、病弱だった雫。 あの頃の雫は、大きくなったら太陽くんのお嫁さんになるぅ!なんて言って可愛かったのになぁ… なんて思いながらじっと見てたら 「楓ちゃんあぶないッ!」 叫んだ雫の声と楓ちゃんの顔面を直撃するボール… 楓ちゃんの回りに何人かの子が駆け寄って覗き込んでるけど当の本人は鼻を押さえて笑ってるし。 やがて再開した試合と楓ちゃんを見てたら、どうやら楓ちゃんはただ、どんくさいだけみたい。 何もない所で一人でコケるし… ボールが自分の所に来ると、一層アワアワとしてなんだかおかしな投げ方で雫に投げ返すし。 あ…またコケた。 何もないところであれだけコケられるのも、ある意味天才かも。 転んでは立ち上がりそれでもボールについて行こうとしてる楓ちゃんの必死な姿に 思わず僕は笑みをこぼしていた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1804人が本棚に入れています
本棚に追加