背中

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僕は勉強ができるわけじゃない。 だけど体育だけはクラスの中でも成績がいいほうだ。 この前のドッジボール大会でもクラスの中で最後まで残っていた。 昼休みには率先していろんな遊びを考えて、クラスの中で流行らせていたから、結構人気者だったと思う。 それは突然だった。 朝の会で先生が僕のライバルを連れて入ってきたのは、ほんの二週間前のことだ。 「今日からこのクラスの新しいお友達の久藤智くんです。」 「さとるっていいます。よろしくです。」 そう言って、さとるはにこやかにあいさつした。 「席は西田くんのとなりね。」 しかもとなりの席になってしまった。 さとるは四年生のなかでも身長も高く、悔しいけどかっこよかった。 さとるがクラスに溶け込むまで、そんなに時間はかからなかった。 あいつの話す輪ではいつも笑いが起こった。 テストの点数も良かった。 この前の100問漢字テストで僕は65点しかなかったが、横目でちらっと見たさとるの点数は9が二つ並んでいた。 おまけにドッジボールでも僕と一緒に最後までしぶとく残る、すばしっこい奴だった。そんなことを考えていると、いつのまにか僕は胸にボールを受けていた。地面に落ちたボールを素早く拾うと、さとるは敵陣に向かって鋭いボールを投げ、一気に二人も外野に出した。 だからさとるは女子の間でも人気者だった。 それが僕は気に入らなかった。
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