12人が本棚に入れています
本棚に追加
この物語はルーツィア学院の姉妹校であるリッチモンド学院でのお話。
PM20:00。305号室。
学院から学生寮へと帰ってきた生徒達は、ルームメイトと共に一緒に過ごす。
ダルシー・ヴィンスは、ルームメイトと話をするわけでもなく過ごしていた。
何故なら、自分の外見のせいで避けられているのだ。学校に行けば、じろじろと見られる。視線が痛い。
髪は真っ白で、瞳は真紅。 病的なまでに身体全体が白い。人によっては、青白くにも見える。
“病的なまでに”という表現は正しくない。
実際、自分は病気である。
アルビノで髪も瞳も色素が薄くて、皆みたいに綺麗な金色の髪・翡翠,碧眼の瞳ではない。
瞳なんて昔から“血の色みたい”だと云われ続けてきた。他には“不吉の象徴”とも云われた事がある。
忌々しい自分の容姿。
改めて、手鏡に映る自分を見て、不快感が心を支配する。
うぅー‥ウザイなぁ
もうヤダ…
髪をぐじゃぐじゃと掻き、声には出さないで心の中で呟く。自己嫌悪。
手鏡を放り出し、ベッドに寝転ぶ。
嗚呼…俺も金色の髪になりたかった。
そしたら、凄く綺麗なのに。
瞳の色も爛々と輝く真紅じゃなくて、透き通るような碧眼になりたかった。
今更叶わない事を望んだって、何も変わらない。儚き夢……。
だが、望んでしまう。
首飾りをぎゅっと握りしめ、目を閉じた。
***
静かな部屋。 沈黙が辺りを支配する。
お風呂でも入ってこよう‥。
何かする事もないし、暇だ。
‥…あの場に居るには、耐えられない。
逃げるように浴室へとダルシーは、姿を消した。
「ハァ‥…アイツヤベーな。今日も色気凄いッ」
部屋に一人残ったルームメイトは、そんな言葉を囁いた。
ダルシーが思っている事とは正反対の感情で、彼を意識していたのだ。
今日も自分の理性を保つのに必死だった。
ダルシーと会話などしたら、自分の想いが溢れ出して、どうなるか分からない。
だから、いつもこの部屋は沈黙が続く。
.
最初のコメントを投稿しよう!