とある夢の話

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 そこには俺と、とある友人しかいなかった。俺はなぜかその友人の名前がわからなかったが、どうやらずいぶんと昔から、とても仲の良い友人らしい、という感覚だけは、はっきりと持っていた。  友人は泣きながら言った。  「みんなどこに行ったの?」  俺はとても穏やかな、落ち着き払った声で言った。  「大丈夫。あの光に向かって行けば、すぐ会えるよ。」  俺にはなぜかそれがわかっていた。  そこは精神世界か、あるいは死の世界への入り口か何かで、俺と友人はそこにいた。  辺りは深い穴みたいな真っ暗な闇で、でもずっと遠くの方には洞窟の出口みたいに眩い光が光っていた。俺達二人がそこに向かって進むにつれ、辺りには次第に人の形をした光の塊がいくつもいくつも浮かんできて、それが祭りの夜の露店の灯りみたいに辺りをぼぅっと照らし始めた。  友人の顔はパッと明るくなった。  「ヒデくん!ヨシキくん!どこに行ってたの?」  友人は、いくつかの人型の光の塊に向かって呼びかけた。  俺は「ほらね、すぐ会えた」と、心の中で呟いた。
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