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◇◇◇
「おーい千夏っ!俺の靴下どこだよ」
寝室から哲也の声が聞こえる。
靴下…?
そうだっ、しまう場所を変えたんだった!
洗濯物をベランダに置いて、慌てて寝室まで走った。
「ごめんねっ、こっちのタンスに変えたのっ」
「何で変えるんだよ~別にこっちでいいだろ」
哲也が指をさしたのはクローゼットの中のボックス。
「だって毎日履く物だしこっちの方がすぐに出せるから…」
私が指をさしたのは、私のドレッサーの横にある新しいタンス。
哲也との新しい生活が始まって、今までにない喧嘩がちょこちょこと増えてきた。
「変えるのはいいけどちゃんと言えよ。お前がいなかったらお前のブラジャーが入った引き出し開けてたぞ」
バカ………。
相っ変わらず変態発言も健在です。
今から哲也は試合の為にドームに行くところ。
玄関で靴の紐をしばる哲也を後ろから眺めた。
哲也との新しい生活が始まってから約一ヶ月。
夏の終わり、哲也がうちに挨拶に来てくれてお父さんに結婚の許しをもらった。
お父さんに結婚を反対されたのは21歳の冬。
あれからあっという間に5年が経った。
その5年の間に、哲也はチームのエース、日本のエースとして成績を残し、今では野球界で哲也の名前を知らない人はいない。
今日は、日本一が決まる大事な試合の先発を任されている哲也。
それなのに普段と変わらない。
普段よりも、のんびりした感じ…。
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