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「…東雲様?」 …ん?今誰か俺の事呼んだ? 「あ!やっぱり東雲様だ!!」 振り返ると、そこにはうちのクラスのチワワちゃんがいた。 この鬼ごっこが始まって、やっと誰かと遭遇したよ。 『こんにちは』 「こんにちはー!…あれ?東雲様は河野様とは一緒じゃないんですね?」 『澪は鬼側なので、今は別々に行動しているんですよ』 「そうなんですかー。じゃあ、ちょうどよかった!」 ちょうどよかったって…何が? 「東雲様、僕に捕まって下さい!」 ガシッ 『…へ?』 いきなりチワワちゃんに腕を捕まれた。 「捕まえましたよ!さぁ、行きましょう!!」 そう言って俺の腕を引っ張る。 よく見たら、この子は鬼の角のカチューシャを付けていた。 この子の髪がふわふわしているから、角が隠れていて気付かなかったよ。 「可愛い猫耳の東雲様を捕まえちゃった!!ゴールしたら何をお願いしようかなぁ?」 チワワちゃんはニコニコしながら独り言を言っている。 笑顔のチワワちゃん可愛いなぁ……癒される…。 …って、それよりまずは逃げる事を考えなきゃね! 澪と会う前に捕まったら、澪に怒られちゃうし。 ニコニコしてるチワワちゃんには悪いけど、逃げさせてもらうよ。 『…あの』 「はい?何です?」 『申し訳ないんですが、今捕まると澪に怒られちゃうので……逃げますね?』 「…え?」 パッ 「あっ!」 『さようなら』 小柄なチワワちゃんの手は簡単に外れて、俺はその場を離れようと駆け出した。 「…あっ、待って下さい!東雲様ー!!」 チワワちゃんは俺の後をついてくる。 本気で走っていないとはいえ、結構体力のあるチワワちゃんだなー。 『どうして俺を捕まえたいんです?俺を捕まえても良い事ないと思うんですけど』 走りながら聞いてみる。 俺を追い続けるより、他を探した方が早いと思うんだけどなー。 「東雲様がいいんですー!僕は東雲様が欲しいんです!!」 …そうなの?何で俺がいいんだろ? 『よくわからないですけど、それじゃあ、頑張って俺を捕まえて下さいね?』 「はいっ!頑張ります!!」 健気なチワワちゃん可愛い…。 .
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