空巣

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 時間は夜であり、中は真っ暗闇だ。物音一つしない。家主は寝ているのだろうか?  用心深く玄関から居間に入るであろう扉を開き、中を懐中電灯で照らした。  人はいない。  五人分のソファー、大きなプラズマテレビ、ガラスの机、大小の引き出しのついた木製の物入れが見えてくる。  物入れは埃一つ被っていないが、アンティーク物で、植物の彫刻が施されている。  私は、一番上の小さな引き出しに手を掛けると、音を立てないようにゆっくりと引いた。  キラリと小さな星々が輝きを放つ。  よく見ると、それは一つの腕時計だった。  私はその時計を手に取ると、引き出しを閉めずに居間を後にした。
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