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7月16日。
天気、晴れ。
天気はコロコロと変わるけれど、僕はいつもと変わらず薄手のカーディガンにネクタイ、耳にはイヤホンという格好で待ち合わせ場所に行った。
ちょっと違うとしたら、会社のジャンパーを持参した所くらいだろうか。
閑静な住宅街にある公園を右手に、細い路地を入って500メートルほど歩いた所に、そのアパートはあった。
周りはきちんと防犯柵で囲ってあり、植物も植えられ、容易に一階を覗き見る事が出来ないようになっていた。
「あ…!榎本さん!こっちです」
アパートの入り口で青砥が大きく手を降った。
なんとも分かりやすい目印である。
「どうも。遅くなりました」
「いえ、私がお願いしたんですから早く来てきゃ失礼だと思って。榎本さんは約束の時間、ピッタリですよ」
彼女はにっこりと笑って、『ほら』と腕時計を見せた。
なんて返したらいいか分からず僕が黙ったままでいると、彼女は鞄から手帳を取り出して、
「早速なんですけど、まずは友達の話しを聞いて貰っていいですか?」
「それはもちろん構いません。部屋の中を一通り見ないことには、何も出来ませんから」
僕は彼女の後をついてアパートの敷地内へと入った。
防犯柵はあっても施錠可能な門扉はなく、基本的に住人以外でも出入りは自由なようだ。
そして鉄筋コンクリート造りのアパートは、さほど築年数も経っていないようで、痛みも殆どみられず外壁も綺麗だった。
エントランスを入れば右側には集合ポスト、左側には通路があり、5つ部屋が並んでいる。
通路を曲がらず先に進めば、右奥にエレベーターが設置されていた。
防犯カメラは一階通路の突き当たりと、エレベーター前の2カ所。
人の出入りを確認する分には十分な数である。
「友達の部屋は3階です」
エレベーターに乗ると、青砥がボタンを押した。
そのエレベーターの中にも、しっかりと防犯カメラが取り付けてあった。
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