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3階に着けばエレベーターを降りて、青砥の後についてゆっくりと歩く。
階ごとの防犯カメラはどこにあるか。
非常用出口の鍵はどんなものか。
部屋に案内されるまでの間も、目視だがアパートの防犯をチェックしていた。
「榎本さん、こっちです。えっと、彼女の部屋は403号室だから…。あ…、ここですね」
「ちょっと待って下さい」
「…え?どうしたんですか?」
ドアチャイムを鳴らそうとして止められた彼女は、不思議そうな顔をして僕を見た。
「青砥さん、お友達に電話を掛けて下さい」
「電話ですか?だってもう、家の前ですよ。チャイムを押せばいいじゃないですか」
「いえ、電話じゃないと駄目なんです。電話を掛けて下さい」
「…はぁ」
間の抜けた返事をして、首を傾げながらも、青砥は携帯を取り出し、目の前の部屋の住人に電話を掛けた。
「あ…、もしもし。紗英?いま、ちょうど家の前まで来てるんだけど…」
言葉に詰まった青砥がチラリとこちらを見る。
「そのまま会話を続けながらドアを開けるように伝えて下さい」
青砥が頷く。
「あのね、電話を掛けたままでドアを開けて貰っていい?うん、お願い」
部屋の中で物音がして程なく、玄関のドアが開いた。
「そのまま会話を続けて下さい」
困惑した顔を合わせながらも、そのまま会話を続ける2人をよそに、持ってきた鞄の中から盗聴発見器を取り出す。
今は素人でも簡単に手に入れられるものだが、その性能は高い。
「お邪魔します」
手早く靴を揃えて部屋に上がりこむと、発見器のLEDランプの点灯具合を見ながら室内を歩く。
LEDランプの点灯で電波の強弱を読み取り、盗聴器の方向が特定出来るのだ。
ある場所で足を止め、発見器を音声受信モードに切り替える。
すると、明らかにこの部屋のものと思われる音が聞こえた。
「榎本さん?さっきから何してるんですか?」
「やっぱり…」
「やっぱりって何です?」
「この部屋には盗聴器が仕掛けられています。青砥さん、いったん外に出ましょう」
「えぇっ!?盗聴器って…!ちょっ…、榎本さん!榎本さん!どこ行くんですかっ!?」
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