32人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「いったん外に出ましょう」
2人の横を通り過ぎて玄関に向かえば、靴を履いて部屋を出た。
慌てて青砥も後を追って出て来る。
そして僕はドアを閉めた。
「あー…、盗聴なんて考えもしなかった。榎本さんに防犯対策を頼む前に、何で気付かなかったんだろう…」
「普通に暮らしていれば、盗聴なんて気にしません。気付かないのが普通です。まずは盗聴器が仕掛けられていることを確認します。青砥さんは彼女と話しを続けて下さい」
盗聴発見器を見せると、青砥は大きく頷いた。
そして、些か緊張した面持ちで携帯を手にし、『もしもし』と彼女に話し掛けた。
すると、部屋の中に居る彼女の返事が持っていた発見器から聞こえてきた。
「今のって…やっぱり…」
「盗聴器からの音を受信してるんです。そのままドアを開けて部屋に入って下さい」
青砥は言われた通りに、携帯を持ったままドアを開けて中に入った。
そして玄関先で立ち止まると、部屋の中にいる彼女と向き合ったまま、もう一度『もしもし』と言った。
盗聴発見器からはドアを開ける音、青砥の声、それに答える彼女の声がはっきりと聞こえた。
「もう携帯は切ってもらって構いません。この部屋に盗聴器があることは間違いないので」
再び部屋に上がると、今度は発見器の受信感度を弱くして場所の特定にあたる。
「あのー…榎本さん。いつ盗聴に気付いたんですか?」
「青砥さんに依頼された時からです。防犯強化の理由がストーカー被害だと聞いて、今は出来ていないのだと考えました。その場合、既に侵入されているケースを考えて盗聴発見器を持参したところ…」
「その話し、長くなりますか?」
「…盗聴器を探します」
「そうして下さい」
最初に聞いてきたのはそっちなのに、話しを遮るなんて有り得ない。
…とは思ったものの、背中に突き刺さる視線に、僕は咳払いをひとつするのが精一杯だった。
最初のコメントを投稿しよう!