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しばらく探していると、テーブル付近からの音がよく聞こえる事に気が付いた。
僕は人差し指で軽く、テーブルをトントンと2回叩いた。
その音は今まで以上にハッキリと聞こえた。
テーブルの上に置かれている物で、偽装が可能な日用品はTVのリモコンとボールペンしかない。
「ちょっとお借りします」
迷わずノック式のボールペンを手にすると、カチッと音を鳴らした。
すると、ノック音はもちろんのこと、僕が手に持った時の擦れた音まで『ソイツ』は丁寧に拾い、受信したのだ。
「盗聴器は、コレです」
「コレって…、普通のボールペンじゃないんですか?」
2人にも分かるように、テーブルの上でボールペンを分解していく。
そして中に仕込まれていた小さな部品を取り出し、青砥の手のひらに乗せた。
「こういった日用品の形状をした盗聴器は偽装型といって、今は誰でも簡単に手に入れられるんです。このボールペンの場合は電池式なので、内蔵された電池が切れた場合、交換しないと盗聴は出来なくなるんですが、問題は…」
「…まだ、何かあるんですか?」
「はい。寧ろ厄介なのは、あっちにあるコンセント型の盗聴器です」
部屋の右隅に差し込まれた、三穴のコンセントに視線を移し、
「あれも盗聴器のひとつですが、寄生式といって、家庭内の電源を取って半永久的に盗聴し続けるタイプです。でも、抜いてしまえば問題はありません。ただ…」
まだ何かあるのか?と、心配そうな表情をして僕を見ている2人を安心させる答えになるかは分からなかったが、言葉を続けた。
「コンセント型の場合は、仕掛けた犯人の指紋が残っている場合があるんです。なので、警察に連絡をして、指紋採取を行った上で取り外す事を僕はお勧めします」
「…紗英、どうする?もし、警察にお願いするんなら、弁護士として私も立ち合うけど…」
ほんの少しの沈黙のあと、彼女は小さく首を振った。
「…すぐに外して貰って構いません。今も聞かれてると思ったら、落ち着かないですもん」
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