Security:青砥side

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私と紗英は、黙々と作業をする榎本さんの背中を見ていた。 部屋のいたるところにある鍵を、開けたり閉めたりを繰り返し、入念にチェックしている。 暫くすると、全てのチェックを終えた榎本が、ひとつひとつ丁寧に説明を始める。 「先ずはベランダの窓のクレセント錠ですが、これは防犯機能を持ってません。単に部屋の機密性を高めるための締まり金具です」 鍵をカチャカチャと弄りながら言葉を続け、 「一般的な窓は、ドライバーで突くだけで簡単に破れるんです。なので、手を入れられるスペースだけをくり抜けば、簡単に侵入できるんです」 「じゃあ、どうすればいいんですか?」 私は質問をぶつけた。 「侵入者にとってはガラスを破ってクレセント錠を外しても、補助錠があれば、もう一カ所ガラスを破る必要が出てきます。なので、侵入に時間が掛かって諦めさせる効果があるんです。出来るだけクレセント錠から離れた位置に取り付けると、かなり有効的ですよ」 補助錠の他にガラスセンサーも有効だと言いながら、榎本は鞄の中からファイルを取り出し、説明を続けた。 「ガラスセンサーは、炸裂音反応タイプと振動反応タイプがあるんですが、後者は誤作動が多いので炸裂音反応タイプがいいでしょう。侵入する際にガラスを割った瞬間、センサーが感知して警報音が鳴る仕組みになってます」 やはり、防犯オタク! セキュリティの事になると、いつにも増して饒舌である。 「あの、榎本さん。もうひとつ質問いいですか?」 私は彼の生徒になったかの如く、元気に手を挙げた。 「どうぞ」 「ベランダに侵入される前に防ぐ方法はないんですかね?」 「ベランダに侵入するのは意外と簡単なんで、完全には無理ですが…」 榎本は窓を開けてベランダに出ると、その下にペンライトを向けて、 「人目が付きにくいベランダ前通路部分に、音の鳴る防犯用の砂利を敷いて、ソーラライトを設置すれば下からの侵入はしづらくなるでしょう」 なるほど、と呟きながら手帳にメモを取る。 「たとえベランダに侵入出来たとしても、そこから先へは簡単に踏み込ませませんから」 榎本は自信満々に言い放った。 さすが、防犯オタク! 私はウンウンと頷いた。
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