performer:青砥side

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「あのー…、榎本さん。本当に上手く出来ますかね?わたし」 「青砥さんなら出来ます」 「…その根拠は?」 「勿論、有能な弁護士ですから」 「だーかーら!弁護士とか、防犯オタクとか、そんなの一切関係ないんです。あー、もー、どうしよー…」 私は頭を抱えて溜め息を吐いた。 さかのぼること数時間前。 紗英の住むアパートから大家さんに連絡を取った。 『あぁ。ちょうど用事があってね、いま管理会社の担当さんと一緒に居るんだよ。こっちに来れるかい?』 そう言われて、榎本さんのワゴンで会社に向かう途中、防犯対策に掛かる費用の話しになった。 「シリンダーの交換や補助錠の取り付けなら、そんなに金額は高くないんですが、ソーラライトやセンサーライトカメラの設置、アパート全室のドアチャイムをセキュリティフェースインターフォンに変えた場合、軽く300万は掛かると思いますよ」 「300万!?そんなお金、出せる訳ないじゃないですか」 いくら身を守るためとはいえ、そんな大金を個人でポンと出せるはずがない。 「僕も出せるとは思ってませんし、一ノ瀬さんに払って貰おうとも思ってません」 「じゃあ、誰が支払うんですか?そんな大金。…って、まさか…!!」 「はい。大家さんと管理会社の担当の方に支払って頂こうかと」 「いくらなんでも無理ですよ!絶対、そんなの警察に被害届出して下さい、で終わっちゃうに決まってますっ!」 「だから、青砥さんにお願いしたんです。警備会社の僕が言っても、ノルマ達成の押し売りにしか思われません。でも、弁護士の肩書きを持った青砥さんの話しなら、聞いてくれると思ったんです」 私は思わず言葉を失った。 M&Aを得意とする口の上手い芹沢弁護士ならまだしも、その部下である自分が話しをまとめられる確率は低い。 「…すみません。ちょっと芹沢さんに電話してもいいですか?」 「いえ、ダメです。この件に関しては、青砥さんじゃなきゃ無理です。あの人が出て来たら終わりだと思って下さい」 終わりって、何なのよ!? 隣で運転をする榎本は、表情ひとつ変えずに淡々とした口調で言った。 「ここ最近、空き巣による窃盗被害が増えている、と。あとは青砥さんの話術に任せます」
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