performer:青砥side

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任せますと言われても困ってしまう。 考えあぐねいていると、榎本が「着きましたよ」と、声を掛けてきた。 もう、やるっきゃない!! ここで後込みしても仕方ないんだから。 と、自分を奮い立たせて車を降りた。 駅から離れた閑静な住宅街に、その管理会社はあった。 「あのー、お仕事中すみません。こちらに菅原さんが、いらっしゃると聞いて来たんですけど…」 「あぁ、菅原さんですね。少々お待ち下さい」 窓口にいた女性が、奥にある部屋の扉をノックし、何やら話しをしている。 そして「中へどうぞ」と、にこやかな笑顔で通してくれた。 「失礼します。先程、ご連絡をさせて頂いた青砥と申します。こちらは東京総合セキュリティの榎本さんです」 「どうも。榎本です」 二人で頭を下げると、菅原の向かいに座っていた、担当者らしき男性が席を立って、こちらにやってきた。 「お話は菅原さんから伺っています。担当の里中といいます」 歳は30半ばだろうか。 スラッとした長身に、グレーのスーツがよく似合うイケメンである。 そのイケメン担当者はスーツの内ポケットから名刺を取り出し、私達に手渡した。 慌てて自分も彼に名刺を渡せば、 「法律事務所…。青砥さんは弁護士をやってらっしゃるんですか?」 「はい。まだまだ、一人前とは言えませんけどね」 「そんな事ないですよ。こんなにお若いのに、素晴らしいと思いますよ」 芹沢さんじゃなくて、この人が上司だったら良かったのに。 不謹慎だか、思うだけならタダである。 「こちらへどうぞ」 榎本と隣り合わせてソファーに座る。 テーブルを挟んだ向かいに、里中と菅原が座った。 大家の菅原は小太りで、白髪混じりの少ない髪を整髪料で固めていた。 「青砥さん…だっけ?電話での話しは本当なのかね?」 菅原が早速、聞いてきた。 「ええ、本当です。先日、そちらのアパートに入居している友人宅に空き巣が入りまして…。窓が割られてなかったんで、玄関から侵入したんじゃないかと榎本さんが」 隣に座る榎本に視線を送る。
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