performer:青砥side

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「勝手かとは思ったんですが、アパートの防犯設備をチェックさせてもらいました。防犯カメラの設置については申し分がないです。ただ、建物の裏側になるベランダの前通路ですが、人目につきにくい場所なのでソーラライトを取り付けたほうが良いと思います。それから、コンクリートの上からで構わないので、防犯用の砂利を敷いて下さい。一階のベランダは不審者が侵入し易いので、入居の際に避ける傾向が多いんです。でも、この2つがあるだけで、安心して入居される方も出てくると思いますよ。…そろそろ、本題に入りましょうか」 目の前に座っている二人は、すでに榎本の勢いに押されてポカーンと口を開けた状態だ。 「今日、ここに来た理由は青砥さんのお友達が空き巣に入られた件で、玄関のシリンダーを交換する事を、大家である菅原さんにお伝えに来たんです。それから、補助錠も幾つか取り付けるので、完了したらそちらの合鍵と一緒にお渡しします」 「はぁ…」 「それから…」 「まだ何かあるんですか?」 話しについていけていない菅原の代わりに、彼の担当者である里中が聞いてきた。 「はい。アパートの鍵ですが、もしかしてシリンダーローテーションしてますか?」 その言葉を聞いた瞬間、里中さんの眉がピクッと動いたのを、私は見逃さなかった。 隣に座る菅原にしきりに視線を送り、何やら様子がおかしい。 「榎本さん、そのシリンダーローテーションって何ですか?」 私はわざとらしく榎本さんに質問をした。 そう。 全ては、打ち合わせ通りに。
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