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「話しは平行線のままで、このままだと訴訟問題に発展しかねないと危惧しているところです」
「僕も先日、その近所に住む方に、家庭用監視カメラを取り付けて欲しいと頼まれたばかりです。やはり、連続窃盗事件を気にされてたようでした」
「最近は物騒ですもんねー…。しかも、その窃盗団はアパートやマンションを中心に狙ってるみたいですよ。菅原さんの所も気をつけて下さいね。訴訟問題になると大変ですから」
と、再度脅しをかける。
そして、私は腕時計を見ると徐ろに席を立った。
「これから、その方達と賠償額についてお話しする予定が入ってるんです。それじゃあ、私はこの辺で…」
深々とお辞儀をして、菅原と里中と目が合えば、ニコッと小さく笑み、くるりと背中を向ける。
続いて榎本も席を立った。
「僕も、青砥さんを事務所に送って、会社に戻らなくてはならないので失礼します」
二人揃って部屋を出ようとした、その時―。
「ちょっ…、ちょっと待ってくれ。防犯の事で相談したいんだか…」
慌てて菅原が、私達を引き止めた。
「なんでしょう?」
榎本は眼鏡の位置を直しながら、菅原に向き直った。
「榎本さん…だったかな?その…、うちのアパートの防犯設備をみてほしいんだが…」
「勿論、構いませんよ。それが僕の仕事ですから」
榎本の心強い言葉に、菅原は安堵の表情を浮かべた。
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