action:青砥side

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私、青砥純子は、まさに今、どデカい雷を落とされている真っ最中である。 「君はそれでも弁護士か!?なんで、君が建物管理に口出しちゃうかなぁ~。あれか?俺に隠れて不動産屋でもやってるのか?」 「やってませんよぉー‥。不動産屋してたら、今頃、弁護士なんてしてません」 「弁護士なんてしてませんだぁ~?今のは俺の空耳か?それとも幻聴か?」 思いっきり眉間に皺を寄せて、さっきから私の前を右へ左へ行ったり来たりしているのは、直属の上司である芹沢豪だ。 芹沢さんは主に企業の合併や買収を行う、総称『M&A』を中心に仕事をしている。 そのため、色々な企業と繋がりを持っているのだが、今回はその繋がりが仇となってしまった。 榎本さんと私が、アパートの管理会社まで行って、防犯設備とは何ぞやと熱く語り、演技をして契約を取ってきた事がバレてしまったのだ。 「じゃあ、この際だ。榎本のいるセキュリティ会社に就職しちまえ!」 「イヤです!絶対にイヤです!考えてもみてください。あの、鍵だらけの倉庫で一日中、榎本さんと二人っきりですよ!?」 芹沢はピタッと立ち止まると、暫し妄想の世界へと旅立った。 かと思いきや、すぐに現実に戻り、ブンブンと大きく首を振る。 「うわ~。俺は絶対イヤだね、あんなところ。しかも、榎本と二人だろ?半日どころか一時間すら保たないね」 「ほらーっ、芹沢さんだってそうじゃないですかぁ!」 「それはー…、アレだ。お前が聞いたから答えただけで…。って、俺はそんな事を話してるんじゃないっ!」 まんまと青砥のペースにハマってしまった芹沢は、脱線してしまった話しを戻す。 「友達の話しは分かった。それでも君は弁護士だ。その立場を使って、嘘をでっち上げて脅すなんて、俺は間違ってると思うけどな‥」 芹沢さんの言うことはもっともだ。 私は感情に任せて、自分が弁護士であることを忘れていたのかも知れない。 例え、それが人を救うことであっても、信用をなくしては弁護士は務まらない。 「…ご迷惑をお掛けして、本当にすみませんでした」 ただ、ただ、謝ることしか出来ない私は、芹沢さんに深々と頭を下げて謝罪した。 顔を上げることが出来ないでいる私の背中を、芹沢さんがポンと叩いた。 「…友達思いなのは、いいことだよ。依頼人の立場に立って仕事をする弁護士としては合格だ」
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