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「あーっ、ちょっ…芹沢さん!」
奪われた携帯を取り返そうと手を伸ばせば、芹沢はクルリと背中を向けてかわし、窓際へと歩いていく。
「もしもし、榎本か?お前なぁ~、青砥を使って管理会社に行くって、どういうことなんだ?なんで俺に一言、言わないの~?」
『すみません。芹沢さんに話したら、絶対に反対されると分かってたので』
「そりゃあ、反対するに決まってんだろう!?こういう事には、ちゃんとした手順ってものを踏んでだなぁ…」
『仲間に入りたかったんですか?』
芹沢の動きがピタッと止まる。
チャンス到来!
私は急いで走り、芹沢さんの右手を掴んだ。
が、そんなのお構いなしとばかりに、芹沢さんは話し続ける。
「ちょっと!芹沢さん!返して下さい!」
「なっ…、なんで、俺が君達の仲間に入りたいと思わなきゃいけないの?タダでさえ、密室事件の度に巻き込まれて、こっちは大変なのに。どうして仲間に入りたいと思うかなぁ~」
『ヤキモチですか?』
「え?芹沢さん、仲間に入りたかったんですか?」
榎本と青砥の二人に、同時に突っ込まれて、芹沢は固まった。
「ばっ…、バカ言え!どうしてそうなっちゃうかなぁ~。俺はね、要するにだな、君らの事を心配して…って、おいっ!もしもし?榎本!?榎本ーっ!」
虚しくも携帯はプツリと切れて、芹沢が何度も榎本の名前を呼んでも、返事が返ってくることはなかった。
ようやく諦めたのか、芹沢さんが私に携帯を返してくる。
「…あいつ、ワザと切りやがった」
「ところで、芹沢さん。仲間に入りたかったのは、本当ですか?」
私はニッコリと笑って芹沢さんに訊ねた。
バツが悪そうな顔をして、芹沢さんは頭を掻く。
「別に…。そんなこと思っちゃあ、いないよ」
「たまには、素直になったほうがいいですよ」
「うるさい!お前に言われたくないよ」
芹沢は自分のデスクに戻ると、いつものように手際良く書類をまとめ始めた。
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