action:榎本side

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「はい、お願いします」 彼女は嫌な顔ひとつせず、防犯オタクの、僕の話しに付き合ってくれる気でいるらしい。 「玄関ドアは『セキュリティサムターン』にしました。外出や就寝時にはサムターンを取り外しておけば、扉に穴を開けられて手を入れられたとしても、サムターンを操作出来ないので、解錠することはまず不可能です」 「分かりました。これを外すだけでいいんですね?」 「はい」 取り外し可能のサムターンを手にして、彼女はまじまじと見つめていた。 玄関から部屋の中に移動すると、次は窓の補助錠について説明をする。 「この補助錠は、フックを引っ張りながらでないと、ロックが外せないようになってるんです。自動ロック装置が内蔵されているので、振動でも緩まない構造になってます。鍵は外さないタイプなので、今より持つ鍵が増えることはありません」 「それじゃあ…私が持つ鍵は、玄関のみでいいんですか?」 「はい。鍵が増えると、解錠も施錠も時間が掛かってしまうので、なるべく増やさない方法を考えました」 「ありがとうございます。助かります」 彼女の笑顔にドキッとして、僕は思わず視線を逸らし、無意味に眼鏡の位置を直した。 「最後にガラスアラームですが、誤作動が極めて少ないものにしました。ガラスが割られた時のみ発する、特有のAE超音波のみを検出して、AEセンサーが感知すると、警報音が鳴ります。ガラス破壊の検出範囲も約2メートルなので、ほぼカバー出来るでしょう」 これで、僕の説明は終了だ。 普段、そんなに喋らない反動からなのか、『あるスイッチ』が入ると、僕の喋りは止まらなくなるらしい。 そう、青砥さんに指摘されたことがある。 彼女が僕の話しに飽きる前に止まってくれて、心の底から良かったと思った。 「本当に助かりました。素人の私じゃ、気付かない所ばっかりでした」 「いえ、それが普通だと思います」
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