doubt:青砥side

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「それは本社にも聞いてみたので確かです。幾つかの派遣会社からアルバイトに入って貰ってたそうなんですけど、出勤名簿はその派遣先の会社ごとに違うみたいなんです。で、契約している派遣先を全て聞いてきました」 さらに、青砥はバッグからA4のクリアファイルを取り出した。 そこには双葉運送が契約している派遣先の一覧表が入っていた。 運転していて見れない榎本に、青砥は話しを続ける。 「契約している派遣会社は5社で、どこも数百人の登録者がいるんです。常勤で長く同じ職場に勤めている人もいれば、1日だけ働いて、後は来ないって人も沢山いるそうですよ。登録会も常に開かれているから、来ない人のデータはある一定の期間で消去されるみたいだし」 「そうでしょうね。今までの登録者全てのデータを管理するのは、到底出来ないと思います」 榎本はこれから話す、先の結果も分かっているような口振りだった。 「それでもどうにか、紗英の引っ越しに入った人数だけは分かりました。見積書に名前のあった、倉橋壮一さん。彼だけが唯一、立川支所の正社員でした。残りの二人が派遣先から来たアルバイトで、当日はその三人で作業を行ったそうです」 信号が赤になりブレーキを踏むと、榎本は青砥の持っていた一覧表を手に取る。 彼は何かを考え込むように、それを暫く見つめていた。 「倉橋さんにアルバイトのことを聞いてみたんですけど…、やっぱり名前までは覚えてないって言われちゃいました」 青に変わった信号を見て、青砥に紙を返すと、ゆっくりと車を発進させる。 「ボールペンの事は、何か言ってませんでしたか?」 そうだった!すっかり忘れていた! 私はジャケットの胸ポケットにしまったままでいたボールペンを、慌てて取り出した。 見積書と一緒に榎本から預かったボールペンは、紗英の部屋から見つかった盗聴器が仕掛けられていたものだ。 「作業の時に忘れ物しませんでしたか?って、倉橋さんに訊ねたら『僕のじゃないです』って、会社のロゴが入ったボールペンを見せてくれました。白に青のグリップで‥会社の名前は赤でした」
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