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噂話には、尾鰭が付きやすいし、みんな、他人のことなら、好き勝手、言いたい放題だ。
もう、セオリー通りとしか、いいようがない。
昨日の一騒動は、昼休みが、終わる頃には、尾鰭の付いた状態で、思いっきり社内に広がっていた。
私と日下さんが、付き合っているって、みんなが、知ることになってしまった。
それは、別にいいんだ…。
こそこそ、付き合わなくていいし、堂々と二人でいられるから…。
でも、気になるのは、鈴村さんのこと…。
彼女、結構、あちこちで、みんなの反感買うような言動を、今までしていたみたいで、噂では、尾鰭付きまくって、ありえないくらいの超悪役になっていた。
仕事帰り、麻衣とお茶していた私は、思わず呟いていた。
「…なんか、鈴村さん、可哀相じゃないかな。」
「知佳…あんたって、本当に、お人よしよね。
悪口言われて、殴られたのあんたなのよ…。」
「うん…そうだね…だけどね…あすこまで、みんな、言わなくても…。
ちょっと…酷すぎるよ…。あれは…。
私が、彼女なら、耐えらんない…。」
「…自業自得だよ。」
「麻衣まで、そんな風に言うんだ…。」
「なんで、知佳が、お局さんを庇うのか、わかんないよ?」
「…確かに、鈴村さんの言ったことは、許せないよ。
でもね…私、鈴村さんの気持ちもね、わかるんだ。
好きな人が、自分とは全然違う、他の人を、見てるんだって、わかった時の気持ち…。
好きな人にはね、向けられないの…自分の中にある、醜い黒い心は…。
心の中に溜まったどす黒いものは、好きな人が、見ている相手に、向けてしまうの…。
私は…そうだったから…。」
「知佳?…あんたさあ、今まで、どんな恋愛してきたの?
知佳が、他人を傷付けるなんて、絶対にありえない…想像出来ないよ。
真っ黒い知佳なんて、考えらんない…。」
「ありがとう…麻衣。
麻衣にだけは、話すね…。
どうしようもない、馬鹿な…昔の私のこと。」
知佳は、昴とのことを、麻衣に話しはじめた。
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